【実測】日本語は英語の何倍のトークンを使う?対訳50文を2世代のトークナイザーで数えた
「日本語はトークンを多く消費する」——AIの料金や文字数制限の話でよく聞く説ですが、実際に何倍なのかを示すデータは意外と見つかりません。そこで当ラボで測ってみました。同じ意味の英日対訳50文を5つのジャンルで用意し、公開されているトークナイザー2世代でトークン数を数えた結果です。数字はすべて本記事のための実測で、手順も公開するので誰でも再現できます。
実験の方法
対訳50文(日常会話・ビジネスメール・技術・ニュース・手順説明の5ジャンル×各10文)を用意し、オープンソースのトークナイザー実装(js-tiktoken)で、o200k_base(GPT-4o世代)とcl100k_base(GPT-4世代)の2つのエンコーディングのトークン数を数えました。文はすべて自然な対訳になるよう作成しています。トークナイザーはモデルごとに異なるため、この結果は「この2方式での実測値」であり、他社モデルでは比率が変わり得ます。
結果1:日本語は英語の1.63倍(新世代)〜2.26倍(旧世代)
50文合計のトークン数は次のとおりでした。
| エンコーディング | 英語 合計 | 日本語 合計 | 日本語/英語 |
|---|---|---|---|
| o200k_base(新世代) | 494 | 807 | 1.63倍 |
| cl100k_base(旧世代) | 500 | 1,132 | 2.26倍 |
1文あたりの中央値でも新世代1.60倍・旧世代2.20倍で、合計とほぼ一致します。文単位のばらつきは新世代で1.00〜2.63倍でした。つまり「日本語だから常に2倍」ではなく、文の種類によってかなり幅があるのが実態です。
結果2:差が最も大きいのは「技術文書」
ジャンル別に見ると、日常会話が最も差が小さく(新世代1.37倍)、技術文書が最も大きい(同1.97倍、旧世代では2.69倍)という結果になりました。「トークナイザー」「ファインチューニング」のようなカタカナ技術用語が細かく分割されるためと考えられます。AIに技術的な内容を日本語で長く書かせると、体感以上にコストがかさむ理由がここにあります。
結果3:新世代トークナイザーで日本語のハンデは大幅に縮小
今回の実測でいちばん重要な発見はこれです。旧世代(cl100k)では日本語1文字≒1トークン(実測0.98文字/トークン)でしたが、新世代(o200k)では1トークンあたり1.37文字まで改善しました。英語は約5.0文字/トークンで両世代ほぼ同じなので、改善の恩恵はほぼ丸ごと非英語圏のものです。トークナイザーの世代交代は地味ですが、日本語ユーザーの実質コストを4割近く下げた計算になります。
おまけ:5言語ミニ比較
同じ10文を5言語で用意し、新世代エンコーディングで数えた結果です(英語=1.00)。
| 言語 | 合計トークン | 対 英語比 |
|---|---|---|
| 英語 | 97 | 1.00 |
| 中国語 | 110 | 1.13 |
| スペイン語 | 118 | 1.22 |
| 韓国語 | 146 | 1.51 |
| 日本語 | 159 | 1.64 |
10文の小規模比較なので参考値ですが、この中では日本語が最も「トークン高コスト」な言語でした。
実務への示唆3つ
- 料金の見積もり:日本語運用のAPIコストは、英語の見積もりの約1.5〜2倍で見ておくと安全です。
- コンテキストの実効量:コンテキストウィンドウも同じ理屈で目減りします。「10万トークン」は日本語では英語より短い文章量です。
- 削るなら定型敬語から:ビジネス文の差(1.50倍)の一部は長い定型表現です。AIへの指示文では「です・ます」を簡潔にするだけでもトークンは着実に減ります。
実験の限界
正直に書いておきます。①測ったのは2つの公開エンコーディングのみで、各社の最新モデルのトークナイザーとは異なります。②対訳の訳し方によって数値は多少動きます。③50文は傾向を見るには十分ですが、統計的に厳密な標本ではありません。それでも「日本語は英語の約1.5〜2倍強」というレンジは、複数の切り口で一貫していました。
よくある質問(FAQ)
Q1. 自分でも再現できますか?
できます。npmで公開されている js-tiktoken を使い、任意の対訳文で encode した長さを比べるだけです。実装の出典はOpenAIのtiktoken(オープンソース)です。
Q2. どのAIサービスでも同じ比率ですか?
いいえ。トークナイザーはモデルごとに違うため比率は変わります。ただ「日本語が英語より多くなる」傾向自体は広く共通です。契約前に各社の料金ページとトークン計算ツールで確認してください。
Q3. トークンの基本から知りたいです。
先日の解説記事「トークンとは?」をどうぞ。本記事はその実測編です。
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